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二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

「憂、燦々」より

 

揺れる電車の中で二人並んで、ガラスに映る彼を見た。

たぶん、彼がいるのは、現実の私の隣なんかじゃなくって、ガラスの向こう側の私の隣だ、と思った。

 

そしたら急に不安になってしまって、振り返ったらちゃんと彼はビールを飲んでいた。

それが嬉しくって堪らなくなって、目をうるませたら、「なんで泣いてんの」とまた言われてしまった。

 

その時、さっきまで聴いていた、声が高いあのバンドの「離さないでいてくれるなら いつでも許してあげるから」という、超くだらない歌詞を思い出してしまって、今度はちゃんと涙が出た。

 

彼はもう呆れたようにため息をついて、またビールを飲み始めた。

底に沈む、もう浮き上がってこないビールの泡みたいな気持ちになって、しゅわしゅわした。

未だにビールは苦くて飲めない。

 

「ずっと傍にいて」なんて、ダサくて言えない。重いなんて思われたら、それこそ意味なくなってしまう。

 

あのバンドは今では結構有名になったな、とか思って、久しぶりに曲を聞いてみたら、やっぱりくだらなくて悲しくて、またこっそり泣いてたら、彼がふと私の頭を撫でて、聞こえるか聞こえないか微妙な声で「大丈夫だから」と言った。

いつの間にか、ビールの中身は無くなっていた。

 

 

一つになれないなら、せめて二人で居ようよ