二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

壁の薄いアパートにて

これでもう、会うのは最後になるかもしれない

 

漠然とそう思った。

そう思ったら急に寂しくなってしまって、

一緒に並んで寝ていてもどこか遠くにいるように感じて、無性に涙が出た。

 

出会いがあったということは、必ず別れも来る。わかってはいたけれど、早かった。

私は彼に布団をすべてかけた。震えるほど寒くなっても、こうしていたかった。

彼に全部尽くしてきた。

やれるだけのことはやったし、今更後悔なんてない。

 

だけど、

 

彼のことを一番好きだったのは私だったし、大切にしていたのも、尽くしてあげたのも、辛い時に優しい声をかけてあげたのも私だった。

私だったはずなのに。

 

彼は私が尽くす度に離れていくような気がした。

 

振られるくらいなら、自分から居なくなった方がマシだ。嬉しかった合鍵も、一緒に飲んだ苦いコーヒーも、イルミネーションも、あの路地裏にあるラーメンも、全部、忘れよう。

 

結婚すると思っていた。

結婚するってどういうことだったんだろう。

 

私は声を殺して泣き、苦しくなりながら、

彼に気付かれないように、キスをした。

 

最後の最後まで、強がってごめんね。さようなら。

 

大丈夫、

きっと全部、愛おしかったものすらも忘れられる。だって彼は愛おしいなんて思っていなかっただろうから、たぶん。

 

大丈夫、大丈夫だよ

視界が歪むなか、私はコートとバッグを手に取り、合鍵をポストに入れ、静かに居なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

居なくなっていた。

朝起きたら、何かが変わっていた。

 

足りないものが幾つかある。それにすぐ気づいた。

もしかしたら、と思っていたけど、こんなに早くなるとは。ポストを開けたら、やっぱり合鍵はあって、合鍵に付いていた、ダサいキーホルダーは居なくなっていた。

 

薄々気づいてた。でもそれがプレッシャーだった。

 

でも、こんなに寂しいと思っているのは自分でも意外だった。

 

これからどうやってこの穴を埋めようか。

どうやったら君のシャンプーの匂いが思い出せなくなるようになるのか。

 

考えながらベッドに横になった時、もう二度とわからなくなってしまうだろう君の髪の匂いがした。