二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

喫茶店

人ってなんの確証もないのに、ああ私この人と付き合うんだろうな、とか、何の不満もないのにこの人と別れちゃうんだろうなって感じる。

そういう時ばかり、勘が働く。

 

だからあの時も、最後の最後まで強がって平気なふりをした。というより、本当に平気だったのかもしれない。

 

別れを告げられた時も、平気な顔で二つ返事した。その後すぐにどちらが引っ越すか、とすぐに現実的な会話までした。

 

それでも安定したものが崩れてしまうのは、怖く、寂しかった。一人から、独りになってしまうことも、これからは一人分の生活費しか稼がなくていいということも。

 

私は別にこのままでもよかったのに。

私は不満なんて、何一つなかったのに。

 

「じゃあ、私このあと約束あるから、先行くね。」

「この前言ってた子?」

「よく覚えてるね、そうその子。あっお金......」

「いいよいいよ、最後くらい払わせてよ。」

「......そう?じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

「ありがとう、ご馳走さま。それと、元気でね。」

 

軽く手を振って彼女を見送ったとき、最後はもう小走りになっていた。追いかけようかとも思ったけど、やめた。

たぶん、約束があるのというのは嘘だ。

 

彼女はいつも感情を僕に見せない。

見せないようにいろんな嘘をついてきて、僕もその嘘に何回も乗っかってきた。たぶん、もっと感情を出してあげればよかったんだと思う。

 

それとも、

僕がバンドをやめればよかったのかな。普通に会社員をしていたら、彼女が泣く時に嘘をつく癖は直ったのだろうか。

 

僕もこのままでもよかった。でも、これは、

僕なりのけじめだ。

 

僕は彼女が居なくなった向かい側の席を見つめて、小さく、泣いた。

 

 

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