二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

口紅 と ハンカチーフ

赤い口紅をしてみたら、君のことがわかるだろうか?

君は強がりだから、いつも赤い口紅をしていた。
その気持ちを隠すように、何度も何度も塗り直して厚ぼったくなった唇を、何度も何度も奪いたいと思っていた。

だけど僕は臆病だ。
臆病なんて言葉で、自分を甘やかしているだけの小さい人間だ。
君に声をかける気なんてないし、君が忘れたハンカチを君に渡すことも出来ない。

ただ、ハンカチの端についた赤い染みを見て、君が口紅をひく瞬間をまた、細かく思い出して想うだけだ。

僕は、臆病だ。
君は、誰のために赤い口紅をひくのだろう、
と思っていた時、君の赤い口紅が、目の前でゴミ箱に入れられたのを見た。

君は誰を想っているのだろうか。



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ハンカチを無くしてしまった。
彼から貰った本当に大事なものだった。

毎日毎日持ち歩いては、彼のことを思い出していた。
あのハンカチが無くては、彼のことを傍に感じられない。

焦る気持ちを隠すように、平然を装って、
口紅をひいた。

             少しの間しか、あなたのものじゃ
             なかったから、どうせ私のことな
             んて覚えていないんでしょう。

彼とは円満に別れる演技をして別れてしまった。その時は珍しく、ピンク色の口紅をしていた。

その時から反抗するかのように真っ赤な口紅をひきはじめた。

赤い口紅は落ちてしまったらすぐわかるから、必要以上に何度も塗り直していた。

でも、
もしかしたら、
いい機会なのかもしれない。

あのハンカチさえ無くなれば、
彼のことを思い出さなくて済む。

時々失敗しては大事なハンカチの端に、
赤い口紅をつけた。

悲しいくらいに、そのくらいだったのだ。
彼のことが大好きだった自分が大好きだっただけ。彼のために作る料理を覚えている自分が大好きで仕方なかっただけ。

無くしてしまっても大丈夫。
忘れてしまっても大丈夫。

私には、無くならない事の方が多いはずだから。

ハンカチを無くしてしまった、と言っておいて、実はわざと落としていた。
あの人がしっかり自分のハンカチを拾い、呆然としているところを横目で見ながら、私はシャネルの赤い口紅をゴミ箱に捨てた。