二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

喫茶店

人ってなんの確証もないのに、ああ私この人と付き合うんだろうな、とか、何の不満もないのにこの人と別れちゃうんだろうなって感じる。

そういう時ばかり、勘が働く。

 

だからあの時も、最後の最後まで強がって平気なふりをした。というより、本当に平気だったのかもしれない。

 

別れを告げられた時も、平気な顔で二つ返事した。その後すぐにどちらが引っ越すか、とすぐに現実的な会話までした。

 

それでも安定したものが崩れてしまうのは、怖く、寂しかった。一人から、独りになってしまうことも、これからは一人分の生活費しか稼がなくていいということも。

 

私は別にこのままでもよかったのに。

私は不満なんて、何一つなかったのに。

 

「じゃあ、私このあと約束あるから、先行くね。」

「この前言ってた子?」

「よく覚えてるね、そうその子。あっお金......」

「いいよいいよ、最後くらい払わせてよ。」

「......そう?じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

「ありがとう、ご馳走さま。それと、元気でね。」

 

軽く手を振って彼女を見送ったとき、最後はもう小走りになっていた。追いかけようかとも思ったけど、やめた。

たぶん、約束があるのというのは嘘だ。

 

彼女はいつも感情を僕に見せない。

見せないようにいろんな嘘をついてきて、僕もその嘘に何回も乗っかってきた。たぶん、もっと感情を出してあげればよかったんだと思う。

 

それとも、

僕がバンドをやめればよかったのかな。普通に会社員をしていたら、彼女が泣く時に嘘をつく癖は直ったのだろうか。

 

僕もこのままでもよかった。でも、これは、

僕なりのけじめだ。

 

僕は彼女が居なくなった向かい側の席を見つめて、小さく、泣いた。

 

 

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下書き 1件

もうね、本当に君のことなんてどうでもいいんだよ。

 

強がりじゃなくって、本当にね。

私ってさ、ほら、すぐ白黒つけたがるじゃない?だからさ、今もずっと実はもやもやしてて、でもね、もういいんだよ。

 

本当に君のことなんて、どうでもいいんだよ。

結局君のことなんて、好きじゃなかったのかもしれないね。

ずっと犬みたいにお座りして待ってて。

いい子にしてるんだよって、いつまで待たせんだよ。

私は犬じゃないからね、そんなに待てないんだよ。馬鹿みたく涎を垂らして。目の前のご馳走にいつまでも目を輝かせているのも、もう疲れちゃった。

 

いいでしょう?それでも君は。

別にいいと思ってるんでしょう?

 

だったらそれで。はい、じゃあ割り勘ね。

あーああ、死ぬほど馬鹿らしい。

反吐が出る。

 

ダメだったら別の探せばいいや、なんて

そうやって生きてるから妥協した人生になっちゃうんだよ。一生そうして暮らしてなよ。一生そうして、本当に大切なものなんかなくなったって、平気でしょう?また探せばいいじゃない。 

一生そうして死ぬ間際に後悔しなよ。

クダバレ。アーメン。

 

 

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件名:無題

本文:お疲れ様!いつ帰ってくるの〜?

もう、返信くらい頂戴よね( ˊᵕˋ )?

 

END

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「私たちももう、終わりだね。」

 

スーパーと君と缶ビール

今日も帰りに近くのスーパーで、

半額になったお弁当を買って、

何もしてないけど御褒美の缶ビールを買う。

 

帰りに缶ビールをフライングしながら

君のことを考えていた

君にずっと後悔していた

 

先のことなんてわからないよねって

言わせるなよ言わないでよ

 

君には何も言えなかった

僕は定価じゃなかった

君に何もしなかった

僕はずっと半額以下だった

 

今日も特に何もしてないし

君の部屋の間取りを数えたりして

また戻ったり浮遊したりして

 

私たち、もういいでしょ?って

あっさりしてるんだな

 

僕は君の何だったんだよ

君は僕にとっての何だ

僕は君に溺れていたんだ

君の心のプールに浸る

 

愛してる会いたい寂しい馬鹿らしい

君しか居ないなんて嘘だよ

 

わかってはいるんだよ

でも君に期待しているんだよ

 

でも僕は君だと半額だ

わかるだろう?

 

 

 

白湯

 

あ、お湯が、冷めた。

まだ、半分しか飲んでいないのに。

 

勿体ないと思ったが、微温い紅茶は嫌いだから、捨てた。

 

熱々だった彼とお揃いのマグカップも、

いつの間にか、体温と同じ温度になっていた。

 

マグカップを丁寧に洗って、棚の一番奥に隠して、別のカップで紅茶を飲んだら、さっきより少しだけ甘い味がした。

 

クタクタになったティーパック。

私は一度使ったら二度使わない。

 

それが正しいのかわからないけど、

私はたぶん、一生そうやって、

一度使ったティーパックをすぐに捨てるんだろう。

 

私はたぶんそうやって、電車の乗り換えみたいに、彼を乗り換えていくんだろう。

 

また、お湯が冷めてしまった。

内緒が秘密になるとき

「これ、二人にしか話してないんだけどね。」

と彼女は笑いながら言った。

その内容は、彼女の笑顔と似合わなかった。

 

でも僕は単純で、君が二人にしか話していない話をしてくれたことがただ嬉しかった。 

 

僕は何か言わなくちゃと口を開こうと思ったが、重い口が、出てきたあらゆる肯定言葉を全て封じ込め、代わりに涙となって出てきた。

 

彼女はまた笑って、「泣かれると困るよ」なんて言っていたけど、本当に困っていたと思う。

 

僕は本当に、君に幸せになって欲しかったんだ。だから僕はただ、君を漠然と幸せにしたいと思ったんだ。僕はただ、君のその慣れた笑顔を、見せて欲しくないと思っただけなんだ。

 

さようならの後に、またねと言えばよかった。

君の中では、もう決まっていたんだね。

 

それなら、

さようならも、ありがとうも、言わないでいて。

 

 

記憶と欠片

私は、嫌なくらいに、記憶力がいい。

 

大体1回行った場所は行き方を覚えるし、

乗り換えに使った駅名も覚えている。

 

何回か脚本を読めば台詞はすぐに覚えられる。

 英語の単語も何回か書けば早い段階ですぐに吸収できる。

 

 

だから、嫌なくらいに、

君の体温、

治らない猫背、

少し癖のある声、

好きな映画監督の名前、

年齢に似合わない口癖、

最寄り駅の名前、

 

全部。

 

一度会っただけなのに、こんなにも細かく、

五月蝿いくらいに、泣き出しそうなくらいに、

鮮明に覚えている。

 

何故か私は、

毎回君の最寄駅で、君が落とした欠片を、

私の記憶を頼りに探している。

 

 もう一度だけ君とスクリーンで、

君が好きだと言っていたあの映画が観たい。

 

その時にはもう私は既に観ていると思うけど、

知らない振りをするから

 

だから、もう一度だけ。

 

 

 

 

 

 

 

朝方、あの時の君の言葉を。

何度も、何度も、あの人の顔を思い出していた。

 

そうでないと、消えてしまう気がして、

そうでもしないと、もう会えない気がしたから。

 

あの人からの連絡は来ない。

完全にペースを乱されている私は、

少し寂しくなりながら、あの朝方を

思い出し、満たされ、我に返った。

 

胸がぎゅっと締めつけられる感覚を

いつの間にか忘れていた私は、

久しぶりな感覚に少し困惑した。

 

何も知らない私は、平気なフリをして

長く暗い廊下を一人懐中電灯を付けないで歩くような、そんな思いで待っている。

 

自分を信じるのが嫌になる。

でも、誰かの言葉を信じるのも嫌だ。

 

綺麗な想いは漆黒の海に沈み、

欲望だけが浮遊する。

 

満たしても満たしても、

欲望は消えることなく次々浮かぶ。

 

きっと私たちは満足することを恐れている。

 

満足してしまったら、空っぽになってしまうのではないか。

空虚感を埋めるための欲望が、空虚感を埋めてしまい、何も無くなることへの恐怖心に変わり、そしてまたその恐怖心を埋めるための空虚を作ってしまう。

 

悲しいくらいにジレンマだ。

 

それならいっそ、想いなど、無い方がマシだ。

 

私はわざと悲しい曲を聴き、泣けない気持ちで枕に顔をうずめた。