二人の映画に乾杯を

タイトルはMy Hair is Badの「悪い癖」から。

@00_xx

つまらない、眩しすぎる画面を見た。

SNSなんて一番つまらないと思うのに、やめられないのは、こわいからだと思った。

ひとしきりつまらない画面をチェックして、1度目の就寝。目を瞑ると君がいる。

瞼の裏の暗闇にいる君は、つまらない光と同じくらい眩しい笑顔で、私のことを苦しめた。

次はいつ会えるだろうか。

目を瞑ると君がいるから寝られなくて目を開けたら、現実の暗闇が押し寄せて、急に虚無感に襲われた。

君のせいで目が覚めてしまったので、とりあえず自分のつまらない気持ちを呟いてみる。

           “@00_xx  次はいつ会えるだろうか。”

瞼の裏の暗闇とは裏腹にピカピカする光を見つめて、2度目の就寝。

明日なんて早く終わればいい。いや、もう0時回ったから今日か。 

今日と明日なんて、早く終わってしまえばいい。

現実の暗闇に自分の気持ちを溶かしてまた目を瞑る。

         “@00_xx 早く、君に会えたらいい。”

私は、退屈な毎日に恋をしている。

 

天然水

別に天然水なんて硬水だろうが軟水だろうが、そんなの体内に入れてしまえば一緒だと思うが、

私はあえて硬水を選ぶ。

大体水なんてどれも同じ味で、塩味や砂糖味はない訳で、しかも水のプロじゃないから、軟水と硬水の違いもわからないくせに、

私はあえて硬水を選んでいる。

“大体、水のプロってなんだよ”

と君からツッコミがきそうだ。

少し前まではずっと、採水地が地元で、なおかつ軟水の天然水を選んでいた。外国産の水なんて有り得ない、と。

それはポリシーであり、誇りであった。

しかしそんなポリシーは意図も簡単に曲げられてしまう。

君が硬水の方が好きだと言うのを聞いてからだ。

恐ろしく単純で恐ろしく素直な私は、

それを聞いた時に、硬水なんて有り得ないという反応をしておきながら、頭の中では次は硬水を買うことを決意していた。

君はクリスタルガイザーを飲んでいて、

私は外国産の水がとても嫌いなのに、

(何故なら以前入院した際にお母さんが買ってくれたベリー味のヴォルビックが不味かったから)

次買う水はクリスタルガイザーだと瞬時に決めてしまった私のポリシーの弱さに失笑してしまった。

私はずっと偏見をもっていて、外国産の水なんてどれも不味くて硬水だ、と決めつけてしまっていて、どうせクリスタルガイザーも硬水だと思っていた。

だが、君の飲んでいるクリスタルガイザーのラベルには、わかりやすく赤い色で、“軟水”と表示されていた。

その時私は全力で「いや軟水か〜い!」

と心の中で君につっこんだ。

それでも私は次は硬水を選んでしまうだろう。

 

清涼菓子

がりがり、と君がミンティアを噛む音が部屋に充満した。

その音が、堪らなく、心地いいのだ。

君はいつもミンティアを食べていて、
前に「フリスクじゃないんだ。」って聞いたら
フリスクにはいい思い出ないの。」と言われてしまった。

あのひと粒に君のどんな思い出が詰まっているのか、気になって眠れなくなった。

君はいつもミンティアを持ち歩いていたから、
君のカバンからはいつもミンティアが揺れる音がしていた。

その音で君が来るのがわかったくらいに、
君のひとつひとつを、
逃さないように、
離さないように、
ずっと見つめていた。

君はずっと誰かを一途に好きになるみたいに
ずっと同じ味のミンティアを買っていた。

「なんでいつもそれなの?」
「前に美味しい味に浮気したら、すぐなくなっちゃったの。」

君のそのときの笑った顔がずっと忘れられなくて、
僕はスーパーに寄るたびにミンティアの前で立ち止まってしまう。


清涼菓子を噛みながら、
好きな音楽を口ずさんでる君の横顔と
夏の暑い日差しが重なって消えた。

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口紅 と ハンカチーフ

赤い口紅をしてみたら、君のことがわかるだろうか?

君は強がりだから、いつも赤い口紅をしていた。
その気持ちを隠すように、何度も何度も塗り直して厚ぼったくなった唇を、何度も何度も奪いたいと思っていた。

だけど僕は臆病だ。
臆病なんて言葉で、自分を甘やかしているだけの小さい人間だ。
君に声をかける気なんてないし、君が忘れたハンカチを君に渡すことも出来ない。

ただ、ハンカチの端についた赤い染みを見て、君が口紅をひく瞬間をまた、細かく思い出して想うだけだ。

僕は、臆病だ。
君は、誰のために赤い口紅をひくのだろう、
と思っていた時、君の赤い口紅が、目の前でゴミ箱に入れられたのを見た。

君は誰を想っているのだろうか。



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ハンカチを無くしてしまった。
彼から貰った本当に大事なものだった。

毎日毎日持ち歩いては、彼のことを思い出していた。
あのハンカチが無くては、彼のことを傍に感じられない。

焦る気持ちを隠すように、平然を装って、
口紅をひいた。

             少しの間しか、あなたのものじゃ
             なかったから、どうせ私のことな
             んて覚えていないんでしょう。

彼とは円満に別れる演技をして別れてしまった。その時は珍しく、ピンク色の口紅をしていた。

その時から反抗するかのように真っ赤な口紅をひきはじめた。

赤い口紅は落ちてしまったらすぐわかるから、必要以上に何度も塗り直していた。

でも、
もしかしたら、
いい機会なのかもしれない。

あのハンカチさえ無くなれば、
彼のことを思い出さなくて済む。

時々失敗しては大事なハンカチの端に、
赤い口紅をつけた。

悲しいくらいに、そのくらいだったのだ。
彼のことが大好きだった自分が大好きだっただけ。彼のために作る料理を覚えている自分が大好きで仕方なかっただけ。

無くしてしまっても大丈夫。
忘れてしまっても大丈夫。

私には、無くならない事の方が多いはずだから。

ハンカチを無くしてしまった、と言っておいて、実はわざと落としていた。
あの人がしっかり自分のハンカチを拾い、呆然としているところを横目で見ながら、私はシャネルの赤い口紅をゴミ箱に捨てた。
















東京


東京。
何でもできるようで、何もできない。
私も、大混雑の中でただ、もがいているだけだ。

一年前と比べたら、大分変わってしまった。
一年前の私は煙草なんか吸わなかったし、
一年前の私は化粧の仕方も、嘘のつき方も知らなかった。

東京。
大人になれた気になれる。

それでも今は、
涙を流しても、欠伸ですと嘘つけるくらいには大人になった。
好きな人ができても、平然とした態度をとれるくらいには大人になった。

だけど、すべて飾りなのだ。
装飾品というには綺麗すぎる、飾りなのだ。

何もできない。
私はただ、東京に浮遊しているだけ。

何もできない。
月を見て君を思い出して、寂しくなるだけ。

君が何を考えているのかわからなくなる、
自分が何をしたいのかわからなくなる。

何でもあって、何でもできるような気がして、
何もできないのが、東京。

23時。東京というジャングルが、私は好き。















距離感


揺れる揺れる電車の中で、私は嫉妬した。
名前も顔も知らない、女の子に嫉妬した。

その時に咄嗟に嘘が言えなくて、愛想笑いをしてしまった。どうせ笑うなら、可愛い笑顔を作ればよかった、と少し後悔した。

私は本当にずるい人間だから、
君が思っているその知らない女の子なんか居なくなればいいと思った。元々存在なんかしないのに。

君が私を見つけてイヤホンを外す瞬間が好きだった。
首をちょっと曲げてイヤホンを外したときの瞬間を、その瞬間を止めて、静止画でずっと見ていたいと思った。

人懐っこく笑うその笑顔がずっと見たくて、
普段使わない頭をフル回転させて楽しい話題を出し続けたら筋肉痛になった。

心臓の音が聞こえないように電車の振動と一緒に揺れた。
ふんわりしたいい匂いが纏ってるベールの中に私は入り込むように近づいた。自分から近づいておいて、顔が近くなってしまっても、平然を装った。

君が今度目の前で煙草吸ってよ、なんて言うから、私は強がって、タイミングが合えばね、なんて言ってしまったけど、その時は本当に肺に穴が空いてもいい、なんて考えてしまった。

きっとその穴は、埋まるから。
そんなちっぽけな穴なんか、埋めてくれるよね?

いつも通り最寄り駅で手を振って、
我に返った後で、水族館に誘うことを忘れてしまったことを思いだした。

でも、それでもずっとこれが続いたらいい。

水族館にずっと誘えないままがいい。
電車の中で話を考えすぎて筋肉痛になるくらいがいい。
君のことを考えながら慣れない料理を作るのがいい。

好きな人ができたら優しくなれるから、
恋人になったら卑屈になってしまうから、
もうしばらくはこのままで。






あ〜全然聞いてなかったな、聞いてる?って聞かれちゃって思わず聞いてるよ、なんて答えちゃったけど、実はずっと君の横顔ばかり見ていたんだよ。

君は誰にでも優しいし、誰に対しても同じ笑顔だし、そういうところはさ、嫌いなんだよ

君がさ、私と話す時にすこし嬉しそうにする表情とかさ、私が「好きな人いるんだよね」って君に言ったときの君の少し悲しそうに見えた顔もさ、もしかして勘違いだったのかもしれないね。

私は全部都合のいいように解釈して、いつも勘違いしちゃうんだけど、もしかしたら今回も3割は私の勘違いだね。

私君のこと何も知らないんだよ。
君の好きな音楽とか、君が昔好きだった子とか、君が抱えているものとか、君が高校生だった時のこととか、何も、知らないんだよ。

いや、知ろうとしてないフリをしているんだよ。
君はそれに気づかないし私も探ろうとしないからさ、全然ダメだね。

ねえ、今度水族館に行こうよ。
もうすぐわたしの誕生日だからさ、いや、君には関係ないかもしれないけど、私、大人になるからさ、すこし、一緒にいようよ。

水族館に行って、深海魚が気持ち悪いね、とか、いらない豆知識披露したりさ、カレイの顔ってすごく可愛いんだよ、とかそういう話をしようよ。

私だけに優しくできないなら、
私だけに冷たくしてよ。

なんて、冷たいレモンティー飲みながら考えても身体が冷えるだけだね。